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歯科評論

無名について

般若心経の経典は、全宇宙を二百六十二文字で表した。我が歯科界は一体、何文字分に相当するのであろうか。むろん三行半もの文字数を要しないことだけは明かであろう。我々の存在を確かめるべく、スペースシャトルで宇宙からこの地球を眺めるには日々の診療があるので無理である。満天の星空を眺めたり大海原に出ることによって、巨視的観点に立って組織の中の儚い自分を対比することができる。だがいつまでも感傷に浸っているわけにはいかない。歯科大学に学士入学した知人は、無事に歯科医師免許を取得して開業するに至った。彼は宮仕えが嫌だと言う理由で自由業を選んだ。しかし日本最大の歯科医師の集まる会は想像以上に封建的で、彼は最近その会を脱会したという。宇宙からでなくても、組織から見て「自分は小さい存在である」。これは卑下のようだけど逃避でもある。自分の中にもミクロコスモス(小宇宙)があるからである。知人の「会を抜けた」は、物事にとらわれなかった広がりを持つのではないか。同時に迷いの体験でもあったが幅広い歯科医師としての機が熟する時でもある。その経典の教えは、迷いは智慧となり高い境地への道程をもたらすと。そして、有名な色即是空 空即是色 は固定的な実体ないの意で、四字熟語である。彼の辞書にも加えたいくらい字面がよい。

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