医療法人社団 栄桜会 杉の木歯科医院 SUGINOKI DENTAL OFFICE

千葉県富里市で保険診療、インプラント、アンチエイジングに取り組む地域密着型の歯医者、杉の木歯科医院のブログ

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歯科評論

私の8020運動

 私は、掛け声だけが重んじられる8020運動に積極的ではない。毎月、頂く指導料に値しないと自認している。これから益々の高齢化社会を向えるのだが、私の存命中はその運動の成果を見ることができないと思う。スローガンを掲げた歯科界のお偉方も確認するに至らないと思う。また将来、重鎮になられる若手のホープらは来る臨終の時に何本の歯を残しているかも知りたい。
高齢者の楽しみは食べる事。それが残存する歯が二十本にほど遠く、また義歯が合わないときは悲しい。だから、まるで自分の歯が二十本以上あるような喜ばしい歯科治療を施すことも一案である。いうまでもなく下顎総義歯のケースは歯科医師泣かせである。そもそも遊離端義歯は若い人にも敬遠され、作っても装着していない患者さんが多数いる。


 まだ花のたよりも聞かれぬ肌寒い早朝、ちょうど八十歳の上下無歯顎の患者さんが金属床の義歯を作りたいと申し出られた。難しいな、と思ったが本人の強い熱意により《完成》に至った。案の定、使い物にならぬ金属とプラスチックの燃えないゴミと化した。「先生、磁石は入れられないでしょうか?」。マグネット対応のインプラントは高齢者に抵抗があった。この地域は農村地区で若い患者さんが少なく、良い義歯は経営上良好な評判になるが思い付きではその付けがまわってくる恐怖がある。年々《腕》が熟達して来るはずだが困難な症例に挑むので心の安まる間がない。


 その八十歳の患者さんに思い切って手術を行った(思い切れないと行えない)。無事に終え、マグネット義歯の装着に至った。声に張りが出てきた。食欲が増して太られた。カラオケが趣味で今度の大会は優勝すると張り切っておられる。その様子を見ていたアシスタントは私の苦労が実り、噛める喜びに満ちあふれている姿に涙ぐんだ。私は自分の寿命を削った結果、その高齢の患者さんが長寿をまっとうする事は疑いの余地がないと確知した。開業して十年に至らなく、基礎系の出身なので臨床医としては駆け出しである。田舎院長に高度な歯科医療の機会を与えていただき、そして良好な成果が得られた。その老人とともに二重丸の喜びを分け合えることが出来たのが今回の私の8020運動である。