医療法人社団 栄桜会 杉の木歯科医院 SUGINOKI DENTAL OFFICE

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映画・音楽論評

歌劇 「オテロ」

小泉新総理の趣味がクラシック音楽で、好きなオペラ歌手がマリオ・デル・モナコ(1915~1982)であると知り、高い支持率とともない俄に親近感が湧いてきた。また今年は「椿姫」や「アイーダ」で知られるイタリアのオペラ作曲家ヴェルディ(1813~1901)の没後百年にあたる。モナコとヴェルディは二人が同邦というだけで、まるで世代が異なる。しかし歌劇「オテロ」を演じるモナコはヴェルディから直接指示を受けたのではないか、モナコのためにヴェルディが作曲したかと思うほどの当たり役である。


 「オテロ」はシェークスピアの戯曲「オセロー」が題材である。ムーア人でベネチアの将軍オテロは腹心の部下、イアーゴに妻デスデモーナのあらぬ不貞のうわさに惑わされ、最後は破滅してしまう悲劇である。人間の嫉妬心と、一度疑いを抱くと止めどがない心理が見事に音で綴られている。オテロが平静を装っても隠せぬ動揺を、虚勢を張っても落胆を心の陰を映し出すように音が、そしてあられもなく名誉も地位をもかなぐり捨てた裸体の人間像がヴェルディにより完成度の高い音の建造物に置き換わる。


 御存じのようにこの物語は、終幕でオテロは妻を殺害した後にイアーゴの策略であることを知り自害する。シエークスピアの四大悲劇の「オセロー」は歌劇でなくても戯曲で十分、鑑賞に堪えられる。音楽を加えただけではBGMの域を脱しない。主役のテナーに極限の発声と表現力を求め、無理難題を押しつけているのは独自性をもって作曲家として二番煎じの非難を避けたとも考えられる。だからオテロを歌いこなせるテナーは世界広しといえども多くはいない。


 マリオ・デル・モナコはこの歌劇を二度録音している(L-POCL3816~7 '54、L-POCL2334~5'61)。最初はイタリア人のエレーデ指揮で、二度目はオーストリア人のカラヤン指揮である。初めの録音は声が若々しく、《黄金のトランペット》の異名に値する。特殊な処理をしたのでは無いかと疑いを抱くかも知れないが録音年度から、また共演の他の男声と比較すればいかに傑出した歌い手かが分かる。エレーデの指揮は優美で流れるような旋律(カンタービレ)をオーケストラから泉のごとく導いている。そして歌手陣の呼吸を妨げることのない指揮である。一方カラヤンは世界屈指のウィーンフィルハーモニーの溢れんばかりの音響を惜しげもなく響かせ、自身の個性を前面に表すさながらシンフォニックオペラともいえる演奏である。ここでも大音量を凌駕する彼の強靱な肉声は見事である。ともに大編成のオーケストラであるが弱音部は美しく奏でられている。イタリアオペラの伝統を踏襲し歌を鑑賞するならば旧盤、総合芸術としてオペラの醍醐味を体験するならば新盤であろう。