医療法人社団 栄桜会 杉の木歯科医院 SUGINOKI DENTAL OFFICE

千葉県富里市で保険診療、インプラント、アンチエイジングに取り組む地域密着型の歯医者、杉の木歯科医院のブログ

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随筆

船長公室にて

日本の華客船、飛鳥の船内は過去二回のクルーズで最上階の展望室から、下の階は機関室まで隅なく見学しておりましたので、私達が今回、東京晴海港から鹿児島港までのクルーズで、船長主催のパーティーの招待状を受け取ったとき会場がパブリックホールではなくて、船長公室と記載されているのを見て嬉しくなり、思わず家内と顔を見合わせてしまいました。


 すでに同じく招待を受けた、四組の御夫妻が着席されていて皆さん、社長か会長クラスのような方々ばかりで私達のような若造は場違いではないかと一瞬、入室するのを戸惑ったものでした。


 船首方向の大きな窓から入る陽光は、白を基調とした部屋の配色と、キャプテンと居合わせた数名の乗船員の白色のユニホームと相まって眩いほどです。豪華な皮張りではありませんが、思っていたよりも広めのソファーは十数人が座れ、壁には控えめに絵が二点飾られコーナーには生け花、カーペットは無地の淡い寒色系。全体としてはシンプルですが、天井だけはスプリンクラー以外に多くの非常灯があり、そして他によく分かりませんが、その形状から船舶特有であろうと思われる小器具類が備え付けられているので、ここがビルの中ではなくてブリッジとともに、いざ、というときの中枢になることが理解できました。


 部屋がシンプルなだけに、そこに居住する人の人柄が部屋のカラーとして現れるのでしょうか?キャプテンはクラシック音楽が趣味ということで、モーッアルトの単純、かつ純粋性が演奏者を厳しく選ぶように、その小さな白亜の館は、不純を排する不文律の聖域にも見えました。文字通り、この部屋は客船飛鳥の象徴であり、そしてそこに居住するキャプテンは間違いなく選ばれた人に違いない。


 エクゼクティブに相応しいマホガニーの執務デスクの、厚みのある机上のスティショナリーは控えめで、チェアーのすぐ後ろにはプライベートの部屋に通ずると思われるドアーがありました。きっとそこには書斎と寝室を兼ねていて、休息時には音楽を聴かれ、時には最近たしなまれたとお聞きしたフルートの音色が充満するのではないかと思いましたが、もし奏でられても、潮騒にかき消されて他人の耳に届かないでしょう。その室内には、すぐ上の階のブリッジに直接上ることができる内階段が設置されているのではないだろうか?


 同席した乗客の、年輪を重ねた人生談義や、造詣の深い数多くのクルーズ体験などにすっかり圧倒され、ほとんど発言しなかった私は暇つぶしに勝手に人の部屋を値踏みをしてしまった自分を打ち消すべく、いつか再びこの部屋に入る時は仕事を充実させ、家庭を守りそして人間的に成長して躊躇なく入室できることを人生という航海の目標として、小一時間ほどパーティーの後に、雄大な桜島を背にして退室しました。